紐育滞在記

『アメリカ音楽史』刊行に寄せたエッセイ

ニューヨークに滞在した二年間、さまざまな媒体に文章を書かせていただきましたが、下記のエッセイは帰国直前に講談社『本』に寄せたものです。震災や原発の信じられない映像をパソコンの画面で見ながら書いた最後の「紐育滞在記」になります。もっともアメ…

二ヶ月もほったらかしにしてしまいました。なんとか時間を作ってライブにはそれなりに足を運んでいるので、少しずつアップしたいと思っています。あと、遅ればせながら今月号の『ミュージック・マガジン』に「シカゴステッパーズ」の用語解説を書いています…

書評

今発売中の『新潮』に古谷利裕さんの『人はある日とつぜん小説家になる』(青土社)の書評を書きました。新潮 2010年 05月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/04/07メディア: 雑誌購入: 4人 クリック: 13回この商品を含むブログ (10件) を見る人…

研究社のサイト内にある『Web英語青年』*1に舌津智之『抒情するアメリカ──モダニズム文学の明滅』の書評を書きました。前著『どうにもとまらない歌謡曲』は少しでも音楽に興味がある人にとっては必読書ですが、今回も素晴らしかったです。抒情するアメリカ …

コロンビア大学のコア・カリキュラム(3)

コロンビア大学のコア・カリキュラム(2) http://d.hatena.ne.jp/adawho/20100206 の続きです。(少し加筆しました。2/13) コロンビア大学のコア・カリキュラムについて、前回までに一年生必修科目"Literature Humanities"(以下、LH)と二年生必修科目 "Con…

コロンビア大学のコア・カリキュラム(2)

コロンビア大学のコア・カリキュラム(1)http://d.hatena.ne.jp/adawho/20100205の続きです。 コロンビア大学が一、二年生全員に課しているコア・カリキュラム。その運営システムについて述べる前に、もうひとつ科目を具体的に見てみよう。"Contemporary Civ…

コロンビア大学のコア・カリキュラム(1)

先週iPadが発表されたとき、Twitterの一部で「教養」について話題になっていた。ジョブスがアップルの理念を説明したときに、どうやら"liberarl arts"の重要性について話したらしい。基本的に僕はチキンで無精なので、Twitter上の荒波に議論を投げかけること…

18

1月18日(月) 祝日。Richard Hofstadter Anti-Intellectualism in American Life. ホフスタッターはアメリカの反知性主義の系譜を三つ挙げている。Evangelicalism, primitivism, そしてbusiness societyである。business societyについては、たとえば「ビジ…

17

1月11日(月) ルーファス・ウェインライトがアッパー・イーストのホテルに出演するというので早速チケットをとる。とはいえ、二人で家を空けるわけにはいかない。断腸の思いでAに譲る。もともと「トゥルー・カラーズ・キャバレー」*1というLGBT運動の一環と…

16

1月4日(月) 赤ん坊は深夜から朝6時ごろまで寝付かず。夜泣きがひどい。 1月5日(火) 今日で赤ん坊が生まれてちょうど一ヶ月。これほどカオスな一ヶ月は経験したことがない。これは何かの修行なのか。だとしたら何の修行なのだろう。ではその修行の成果と…

15

見にくいので別エントリーにしました。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー"New York is falling apart."──9月のある日、東京とニューヨークを行き来しながら生活するローランド・ケルツ氏とソーホーのカフェで昼食をともにしたとき、ふと彼はこうつぶや…

14

12月14日(月)〜20日(日) 今週は特に書くべきことはない。月曜日に産婦人科でAが産後のチェック。土曜の午後に日本から来たNさんと渡辺と三人で二時間ほどお茶をした以外はただひたすら赤ん坊の世話をしていた。一日のうち自分が起きていて、かつ赤ん坊が…

13

12月7日(月) 午前中、産科医と小児科医が病室に来て診察。出産時の出血が多かったため、ある検査の結果を待ちその数字が20以上だったら退院、以下だったらもう一泊するようにといわれる。実は昨日、Aは貧血で一度意識を失っており、本当はもう少し病院にい…

12

11月30日(月) 午後、病院。夕方、原稿を送る。 12月1日(火) 昼過ぎに大学へ。14時、フィロソフィー・ホールでセミナー。Junot DiazのThe Brief Wondrous Life of Oscar Waoを読む。2007年度全米批評家協会賞およびピュリッツァー賞受賞。The Brief Wondr…

11

11月23日(月) 昼過ぎに大学へ。14時、ハミルトン・ホールのアンドリュー・デルバンコ教授の研究室へ。ちなみに、デルバンコさんはコロンビアでの僕の受け入れ教官である。英文科(コロンビアはEnglish and Comparative Literature=英文学および比較文学科…

10

11月16日(月) 義理の伯父が亡くなったとの報。父親と連絡を取りながらもろもろ進める。14時、病院。夕方に帰宅し、Alison BechdelのFun Homeを徹夜で読む。 11月17日(火) 朝方少しだけ寝て、12時過ぎに大学。14時、セミナー。今週の課題図書はアリソン・…

9

11月9日(月) 16時、ホテルで真理さんと9月からNYUの客員研究員としてこちらに滞在中の中地さんと待ち合わせ。ダコタ・ハウスをご案内したあと、しばらくセントラル・パークを散歩する。紅葉が美しい。誰もがいうことだけど、いつも殺気立っているマンハッ…

8

11月2日(月) 14時、病院。とても混んでいた。山内さん最後の夜、ということでステーキを食べにいく。18時ごろ家を出てNラインでキャナル・ストリートまで。そこでJラインに乗り換えてブルックリンのマーシー・アベニュー。駅を降りて線路沿いにマンハッタ…

7

10月26日(月) 夜、訃報が届く。学生時代のサークルの二つ上の先輩が事故でなくなったのこと。その先輩とはサークルで何度も顔を合わせていたものの、どこかつかみどころがなく、はぐらかされてばかりいたような気がする。いつも笑顔で、でもその笑顔が本心…

6

10月19日(月) 朝からネタ探し。うーん。すぐ思いつくときもあるのになあ。なんとかかたちにして原稿を送る。 10月20日(火) 13時、お礼も兼ねてAとレイチェルの研究室を訪問。来るべき日々に向けてアドバイスをいただく。14時、大学院セミナー「現代アメ…

5

10月12日(月) 国際ポー学会帰りの巽先生、笠井潔さん翔さん父子、小森健太朗さん来訪。今日は一日ニューヨークをご案内。10時にホテルで待ち合わせ、まずは72丁目のダコタハウスへ。1980年12月8日、ここでジョン・レノンはマーク・デヴィッド・チャップマ…

4

2009年6月25日、MJが死んだ。僕は、自分でも気づかないうちにショックを受けていた。ただ、その気持ちをどのように表現していいのか分からず、とにかく誰かに話を聞いてもらいたいという一心でAに話題を振ってみた。 「ものすごいショック」 「そうなんだ」 …

3

ソーシャル・セキュリティ・ナンバーを取得した。嬉しい。あまりに嬉しくて、スタバでコーヒーを注文するときも「ソーシャル・セキュリティ・ナンバーは必要ないのか!」と店員に詰め寄りたくなる。だが、試練は続く。ニューヨーク在住の日本人は5万人とも10…

2

ニューヨークに赴任して4年目のSさんから電話がかかってきた。すでに還暦近いSさんが、若いころにAさん──最近、久しぶりに詩を発表したことで話題になった、といえばわかる人にはわかるだろう──と二人で「悪いことばかりしていた」数々の伝説(ぼくの仕事場…

1

スーツケースふたつ(68キロ)と手荷物(15キロ)、それに疲労と時差ボケをかかえながら14日昼にJFKに到着。シャトルバスを乗り継いでマンハッタンはヘルズ・キッチンの新居へと向かう。ドアを開けると当然のごとく中は空っぽで、しばし呆然とする。これから…