追悼サイード

エドワード・サイード死去。

その著書『オリエンタリズム』(原著1978年、平凡社ライブラリー、上下巻、1993年)において、サイードマルクスの一節をエピグラフに掲げている。「彼らは自分で自分を代表することができず、だれかに代表してもらわなければならない」(『ルイ・ボナパルトブリュメール18日』)。「オリエント(東洋)」が常に西洋を通して表象されてしまうがゆえに、それ自身は決して自らを表象することができないということ。オリエントに対する西洋の「関心」が、美学的/学術的/歴史学的言説に配分されることで、その心象地理を固定させてしまうこと。こうした知識と権力の癒着の構造を、サイードは1978年の時点で看破した。

「オリエンタリストとは書く人間であり、東洋人(オリエンタル)とは書かれる人間である。これこそ、オリエンタリストが東洋人(オリエンタル)に対して課した、いっそう暗黙裏の、いっそう強力な区別である」(『オリエンタリズム』下巻、244頁)

最近はこうした二項対立的思考への批判も目立ってはいたものの、この強力な分析装置が人文系の研究者にもたらした影響は計り知れない、と思う。