2003年ベストテン(音楽)

(新譜)

  1. バッファロー・ドーター / シャイキック (V2/コロムビア 2003)
  2. デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン / Strucuture et Force (P-Vine 2003)
  3. キリンジ / For Beautiful Human Life (東芝EMI 2003)
  4. The Matthew Herbert Big Band / Goobye Swingtime (Accidental / Ultravybe 2003)
  5. Randy Newman / The Randy Newman Songbook Vol.1 (Nonesuch 2003)
  6. Sex Mob / Dime Grind Palace (Ropeadope / P-Vine 2003)
  7. スパンク・ハッピー / Vendome, la sick KAISEKI (King 2003)
  8. V.A. / New Orleans, New Funk (Gianormous/Tower 2003)
  9. V.A. / You Are Here (Accidental 2003)
  10. Ween / Quebec (Sanctuary/P-Vine 2003)

ここ数年あまり代わり映えしないが、とにかくよく聴いたアルバム10枚。アルファベット順。1)と2)はまったく異なるコンセプトを用いつつ、反復を音楽の中心に据えている点では同じ。それにしてもこの二枚はカッコいい!3)は、そうした反復からいかにして逃れるかを突き詰めた結果、日本のポップスとしてはほとんど異様とも言える旋律・和声進行にたどり着いてしまったアルバム。以前にバカラックがブルースについて「単純なスリー・コードの曲だけは書きたくない」と発言していたのを思い出す。和製スティーリー・ダンとの評も定着してきたようだが、ジノ・ヴァネリなどのプログレッシヴ・AORにも近いような気がする。4)と9)はマシュー・ハーバート関係。予定が合わなくてブルーノートにいけなかったことを後悔。9)の一曲目に収録されているMax de Wardenerについて誰か教えてください。ソロではなくダムタイプの音響を担当しているときの池田亮司にどことなく似ていてクール。6)はここ を参照。7)は過剰に意味を内包した菊地成孔と完全に意味が欠落した岩澤瞳の掛け合いにやられました。オリヴィア・ニュートン・ジョン「フィジカル」のカバーなんて反則だ!8)は脈々と受け継がれるセカンド・ライン・ファンクの現在を映し出すコンピ。スタントン・ムーアのソロやスマイリン・マイロンなどを収録。10)は変態ロック・バンド。『ボナルー・ミュージック・フェスティヴァル2002』でのパフォーマンスが印象的。次点としてRickie Lee Jones / The Evening of My Best Day (V2/Columbia 2003)、倉地久美夫 / I Heard the Ground Sing (美音堂 2003)など。


(再発、発掘音源)

  1. Bernard Purdie / Lialeh: Original Movie Soundtrack (1974 Light in the Attic/Otave Lab. 2003)
  2. Creme D'Cocoa / Nasty Street (Venture 1979 P-Vine 2003)
  3. Led Zeppelin / How the West Was Won (Atlantic/Warner 2003)
  4. Maria Muldaur / Classic Live! (Warner 2003)
  5. Marvin Gaye / I Want You+17 (Deluxe Edition) (Motown 1976 2003)
  6. NRBQ with John Sebastian / Live at the Wax Museum (Big Notes 2003)
  7. Salt Water Taffy / Finders Keepers (Budda1968 BMG2003)
  8. The Who / Who's Next (Deluxe Edition) (MCA 2003)
  9. 山下毅雄 / 黒猫?黒い足音(ウルトラヴァイヴ/ビクター2003)
  10. YMO / イエロー・マジック・オーケストラ (Alfa/Sony1978 Sony2003)

新譜と同様アルファベット順。YMOの再発に始まり、レッド・ツェッペリン騒動に狂った一年。なんだけど、よく聴くとやっぱりツェッペリンよりもザ・フーに熱くなる自分を再確認した年でもあった。要するにジョン・ボーナムよりもキース・ムーンが好き、ということなんだと思う。ツェッペリンの重厚なロックのリズムよりも、ザ・フーのひたすら軽快なロックンロール風情にしびれる。ライナーの翻訳を担当した1)はバーナード・パーディーが「作曲」をしているだけで貴重。2)はエボニーズとアンバサダーズが合体した泣く子も黙るフィリー・ダンサー。陳腐な装丁で突然店頭に並んだ4)にはびっくり。73年のライブ録音。「真夜中のオアシス」以下、代表曲をほとんど唄ってます。6)も82年の未発表ライブ音源。しかも昨年のスター・パインズ同様、ホーン・セクション付き。しばらく遠ざかっていたソフトロック熱を瞬間的に沸騰させた7)。すぐ冷めたけど。ヤマタケ発掘音源9)は自動的にランク入りすることになってます。


今年も初期アメリカ音楽やルーツ・ミュージック関係のCDが大量に発売された。1996年のハリー・スミス『アンソロジー』再発がきっかけだったのか、あるいはコーエン兄弟の映画『オー・ブラザー』公開に端を発しているのか、それともただ単にアメリカの右傾化が原因なのか、とにかくここ数年の盛り上がりは異常だ。これだけ充実したリリースが続くのであれば右でも左でもどうでもいいような気もするけど、資料的価値の高いCDは繰り返し聞くわけではないし、買っても買ってもキリがないというのが正直なところ。以下、発売年に関係なく今年自分で購入したものを中心に。

まずなんといっても映画『歌追い人』の公開に合わせて発売されたサントラ V.A. / Songcatcher (Vanguard 2001)とその続編とも言えるV.A. / Songcatcher II (Vanguard 2002)。アラン・ローマックス関係はいつもの通りラウンダーから。V. A. / Alan Lomax: Popular Songbook (Rounder 2003)はローマックス入門編とでも言うべきコンピレーション。ローマックスの本と併せて発売されたV.A. / The Land Where the Blues Began (Rounder 2002)。V.A. / Blues in the Mississippi Night (Rounder 2003)にはBig Bill Broonzy, Memphis Slim, Sonny Boy Williamsonが収録。DVDでは、なんといってもThe American Folk Blues Festival 1962-1966 Volume One, Volume Two (Reelin' in the Years Productions and Experience Hendrix 2003)が衝撃。ソニー・ボーイ・ウイリアムソンがマディー・ウォーターズとウイリー・ディクソンとセッション!ハウリング・ウルフもTボーン・ウォーカーもオーティス・スパンもミシシッピ・フレッド・マクダウエルもみんな動いてる。さらにマーティン・スコセッシ監修のテレビ映画シリーズ『ザ・ブルース』V.A. / Martin Scorsese Presents The Blues: A Musical Journey (Universal 2003) 5CDs。まだDVDは入手してません。日本版、出るんでしょうね?スミソニアン関係ではV.A. / Classic Old-Time Music from Smithonian Folkways Recordings (Smithonian Folkways 2003)など。