水村美苗とリービ英雄
わけあって水村美苗の作品を再読中。
「外からやってきたよそ者は、日本社会の多くの場で門前払いという苦い経験を味わうのだが、もしその人に少しでもコトバに対する感受性と冒険心があれば、日本語だけは門前払いを食わせない、日本語だけは話し手や聞き手、あるいは読み手や書き手の人種を問題にしないということを発見するのだ。」リービ英雄『日本語の勝利』
人は人を拒絶する。しかし言葉は、最終的には人を拒絶しない。幼少期にアメリカで「ありもしない日本のイメージ」を過剰に膨らませた水村美苗は、帰国後に絶望を味わうことになる。そんな彼女が必死の想いですがるのは、日本人ではなく日本語である。しかも、「異国語」としての日本語だ。漱石の文体を完璧に模写した『続 明暗』は、そうした意識から必然的に生まれた作品だといえる。
「日本人として生まれた者でも、本当の作家なら、常に「母国語」が「外国語」であるかのような緊張の中で書いているに違いない。」リービ英雄『日本語の勝利』