ミンストレル・ショウ、ポーグス

Monarchs of Minstrelsy: Monarchs of Minstrelsy

Monarchs of Minstrelsy: Monarchs of Minstrelsy

昨日の講義では19世紀アメリカのミンストレル・ショウを取り上げた。上のMonarchs of Minstrelsyは20世紀初頭(最も早い録音で1902年のものがある)のミンストレル・ショウのレコーディングを集めたアルバム。ミンストレル・ショウが流行した1840年代の録音は当然聴くことができないが、こうしたアルバムがあるだけでもだいぶイメージが掴みやすい。First Part、Olio (Second Part)、Afterpieceという実際のミンストレル・ショウの構成を再現した第一部、"Early and Obscure Minstrel Performers"と題された第二部、それに20世紀初頭にブロードウェイで人気を博したLew Dockstader's Minstrel ShowとCohan and Harris' Minstrelsのステージが第三部と第四部に録音されている。クレジットやライナーなどの資料も充実していて、巻末にはHans NathanやRobert C. Tallなどの基本文献も挙げられている。さすがArcheophone*1。グッジョブ。

ザ・ミンストレル・ショウ(初回限定ファイネスト・プライス)

ザ・ミンストレル・ショウ(初回限定ファイネスト・プライス)

講義の最後は、このアルバムで絞める。昨年発売されたリトル・ブラザーのThe Minstrel Showは、アルバム全体が架空のテレビ番組に設定されている。曲の間にskit(コント)が挟まれ、ボーナス・トラックに"Olio"という曲が収録された構成は、「21世紀のミンストレル・ショウ」というコンセプトを明らかに意識したものだ。

19世紀のミンストレル・ショウは「白人が顔を黒く塗って黒人のまねをする」というblackfaceの伝統を劇場文化に取り入れたものだが、やがて黒人の芸人がblackfaceを演じるというケースも出てくる。Master Jubaの芸名で知られたウイリアム・ヘンリー・レインなどがそうだ。これは、いってみれば美川憲一がコロッケの演じる美川憲一のモノマネのマネをする、あるいは中川家礼二の大阪のおばちゃんのモノマネを実際に大阪のおばちゃんが真似る、というのに等しい。(等しいのか?)リトル・ブラザーはこの点もきちんと踏まえていて、ライナーには「白人が演じる黒人のモノマネを黒人が演じる」"ironic"な構造について書かれてある。傑作。

講義終了後、ポーグスのライブ@渋谷AX。さすがにみなさんお年を召したこともあって勢いは少し衰えていたものの(その結果、わりと普通のアイリッシュ・バンドっぽくなった)、シェーンの酔いどれっぷりは相変わらずだし、いちいち曲が泣かせます。アンコールの「ニューヨークの夢」で号泣。