<子ども>の文学100選

少し前になりますが、『國文學』8月臨時増刊号の特集「<子ども>の文学100選」*1に、10枚ほどの文章を2本書きました。東京外国語大学の和田忠彦さんセレクトによる100冊をいくつかのテーマ別に分け、都甲幸治さんや小澤英実さんなどと執筆したものです。ぼくは「闇の中の旅(恐怖の勝利)」と「滑稽のかたち」と題された項目を担当し、前者ではウォルポール『オトラント城』、シェリー『フランケンシュタイン』、ゴーチエ「死霊の恋」、スティーヴンソン『ジキル氏とハイド氏』、カフカ『変身』、後者では『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』、ボッカッチョ『デカメロン』、トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』、フローベールブヴァールとペキュシェ』、サリンジャーライ麦畑でつかまえて』の5作品をそれぞれ論じています。

とにかく和田さんのセレクトが素晴らしく、はじめてリストに目を通したときにはほれぼれしてしまいました。ぼくは一応「アメリカ文学アメリカ文化」が専門ということになっていますが(そして「専門」というからにはなにかしら縛りが必要だとも思いますが)、「文学」に地域的な縛りをかける(大学の)制度的慣行のつまらなさを痛感し、昔は別に「フランス」文学、「ロシア」文学などと考えながら読んでなかったよなあ、と文字通り<子ども>の気持ちにもどってわくわくしながら読み直しました。