2008年ベストテン(新譜編)

昨年以来、基本的にヒップホップ以外は聴けない体になってしまった。ジャンルそのものに微妙な停滞感が漂うのに反して、今年も楽しませてもらいました。例年どおり並びはアルファベット順。

  • 1) The Cool Kids / The Bake Sale (Warner 2008)
  • 2) E-40 / The Ball Street Journal (Reprise / Warner Music Group 2008)
  • 3) Flying Lotus / Los Angeles (Beat / Warp 2008)
  • 4) Lil Wayne / Tha Carter III (Cash Money / Universal 2008)
  • 5) N*E*R*D / Seeing Sounds (Star Trak / Universal 2008)
  • 6) Perfume / Game (徳間ジャパン 2008)
  • 7) Raashan Ahmad / The Push (Blues Interactions 2008)
  • 8) Q-Tip / The Renaissance (Universal /Motown 2008)
  • 9) SEEDA / Heaven (KSR 2008)
  • 10) T-Pain / Thr33 Rings (Zomba Sony BMG 2008)

80年代回帰──これが単にぼく自身の趣味なのかシーン全体の動きなのかは分からない。が、ランキングには入らなかったカニエ(808s & Heartbreak)とコモン(Universal Mind Control)の新作にもみられるエレクトロ志向が目立った一年だった。MySpaceで話題になったシカゴ出身の若者二人組1)The Cool Kidsもエリック・B&ラキムへのリスペクトを公言している。

こうして考えると、太平洋を挟んで大流行した「ロボ声」──個人的に今年最も聴いたのは6)Perfumeと10)T-Painのアルバムだ──も、それがアーティストの「二次元化」を連想させる点で同じ文脈で捉えられるかもしれない。言ってみれば、それは「80年代的なフューチャリズム」である。TR-808サウンドに象徴されるチープでフラット(二次元)な未来像。しかし、それは80年代に夢見た未来そのものではありえない。過去のある時点で失われた「未来」──ぼくらがPerfumeの「ロボ声」にどうしようもない切なさを感じるとすれば、それはその「未来」をすでに喪失してしまっているからだ。


The Cool Kids "Black Mags"──DIY精神あふれる新進気鋭の若者二人組。恐慌の時代のヒップホップはアメ車ではなくチャリンコだ!

ザ・ベイク・セール

ザ・ベイク・セール


E-40 "Wake It Up Feat. Akon"──ハイフィーの本場、サンフランシスコ・ベイエリア出身のベテラン・ラッパー。

Ball Street Journal (Clean)

Ball Street Journal (Clean)


Flying Lotus──今年一番ハマった西海岸ミュージック・プロデューサー&DJ。http://d.hatena.ne.jp/adawho/20081015参照。

Los Angeles (WARPCD165)

Los Angeles (WARPCD165)


Lil Wayne "Lollipop"──ダミ声+ロボ声でありとあらゆる客演をこなし、2008年のヒップホップ・シーンを席巻したのはこの人。

カーターIII

カーターIII


N*E*R*D "Everyone Nose"──「ボルティモア・ブレイクス+マイアミ・ベース!」とファレルが高らかに宣言するこの曲がむちゃくちゃかっこいい!

Seeing Sounds (Clean)

Seeing Sounds (Clean)


Perfume──もういうことないです。とあるパーティーではダンス・サークル所属のゼミ生にむりやり「ポリリズム」を踊らせたり、自分でもかなり冷静さを失っていたと思う。

GAME

GAME


Raashan Ahmad "Peace"──西海岸アンダーグラウンド・ヒップホップ・グループ、Crown City Rockersのメンバー。PVがオシャレ。

ザ・プッシュ

ザ・プッシュ


Q-Tip "Getting Up"──いわずとしれたATCQのリーダー、9年ぶり2枚目のソロアルバム。PVがオシャレ。

Renaissance

Renaissance


SEEDA──日本のヒップホップが異常に盛り上がっている。しかも、いわゆるメジャー・シーンではなく、札幌、仙台、名古屋などそれぞれの地方都市に文化として定着しているのだ。知人に勧められて聴いたSEEDAはとにかく三枚目のGreenが素晴らしかった。「今年はSEEDAの年じゃないですよー。どっちかっつーとAnarchyかBESですね」とヒップホップ好きの学生には一蹴されたが(そしてAnarchyのDream and Dramaも良く聴いたが)今年初めに出たこのアルバムも良かった。

HEAVEN

HEAVEN


T-Pain "Chopped N Screwed"──ロジャー・トラウトマン直系の「ロボ声」伝道師。PVが面白い。

Thr33 Ringz (Dlx)

Thr33 Ringz (Dlx)