バーゲン・ホワイト『フォー・ウィメン・オンリー』(Bergen White / For Women Only; SSS International 1970 Rev-Ola/Ultravybe 2004) CD

ライナーの翻訳(14ページほどのブックレット。訳文も原稿用紙換算で45枚)を担当したので宣伝もかねて。

元ロニー&ザ・デイトナスのメンバーで、現在もアレンジャーとしてナッシュヴィルを拠点に活動を続けるバーゲン・ホワイトが1970年に発表したソロ・アルバム。1969年頃からはエルヴィスのアレンジャーとしても活躍していたらしい。

このアルバム、バックにエリアコード615でナッシュヴィル録音ときけば、どうしたってカントリー、ロックンロール的なサウンドを想像してしまうけど、むしろ華麗なストリングス・アレンジがフィーチャーされていて、感じとしてはソフト・ロック、SSWものに近い。作曲家陣も豪華。バリー・マン&シンシア・ウェイル、ブレッドのデヴィッド・ゲイツ、それにテディ・ランダッツォなど。バーゲン・ホワイト本人の曲もかなりいい。

このアルバムを聴いていると、ナッシュヴィルとウェストコーストの意外な「近さ」に驚かされる。バーゲン・ホワイトは最も敬愛するアーティストとしてブライアン・ウィルソンの名をあげている。そして解説にもあるように、そもそもロニー&ザ・デイトナスが「ビーチ・ボーイズに対するナッシュヴィル側の応答」だったのだとすれば、このソロ・アルバムも西海岸の人工的で洗練されたサウンドに対する彼自身のあこがれを表現したものなのかもしれない。

リトル・アンソニー&インペリアルズやレターメンのヒットで知られる"Hurt So Bad"のカヴァーが収録されているが、ライナーの解説では、バーゲン・ホワイトのアイディアがいかにしてパクられてレターメンのヒットに繋がったかというエピソードが披露されていて、けっこう面白い。

エリアコード615という名前に惹かれてこのアルバムを手に取る人も多いだろうし、マン&ウェイルの曲を目当てに購入する人もいるはず。ソフトロック好きも絶対気に入ると思う。とくに1曲目なんて、ほとんどロジャー・ニコルスかと思うほど軽快でポップ。