『ウェイン・マギー・アンド・ザ・サウンド・オブ・ジョイ』(Wayne McGhie & The Sounds of Joy; Birchmount 1970 Light in the Attic/Ultra-Vybe 2004)

これも16ページほどのライナーノーツ対訳を担当。

流石にカナディアン・ファンクはほとんど聞いたことがなかった。解説によれば、1960年代にカナダの移民法が改正されたことで多くの西インド諸島出身者がトロントなどに移り住んだらしい。今ではトロントは世界的にも移民都市として名高いが、1970年の時点で既に約45000人の西インド諸島出身者がカナダに移住していたようだ。

ウェイン・マギーもその一人で、先にトロントでミュージシャンとして活躍していたジョージョー・ベネットに呼ばれる形でジャマイカからカナダに移り住み、本格的に音楽活動を始める。このアルバムを発表したあとは不遇を託ち、80年代は完全に忘れ去られていたようだが、90年代に入りヒップホップ界隈のコレクターに再評価されるようになる。

ジャマイカ出身とはいえ、このアルバムを聴く限りレゲエ調の曲は少なくて、むしろ正統的なR&B、ファンク系のサウンドが中心。1995年に再評価されるきっかけになった5曲目の「ダーティー・ファンク」は、ほとんどミーターズかと思うほどのセカンド・ライン・ファンク。たしかにジャマイカ出身のバンドでこれだけソウル、ファンク色の強い演奏しているグループは少ないかも。というより、一枚のアルバムにサザン・ソウルセカンドライン、レゲエなど様々なスタイルが混在しているあたりに、多様な客層相手に演奏することを迫られるトロントならではの音楽事情が垣間見える。

あとは「恋はフェニックス」の邦題で知られるグレン・キャンベルの"By The Time I Get To Phoenix"(ジミー・ウェブ作曲)のカバーも収録。これも直接グレン・キャンベルからではなく、おそらくアイザック・ヘイズのカバーバージョンを参考にしたのではないか。

それにしても、例のバーナード・パーディーのアルバム もそうだけど、Light in the Attic の最近のリイシューは掘り出し物が多い。