遭難

16日、劇団、本谷有希子第11回公演『遭難、』@青山円形劇場

学校内で一人の生徒が自殺未遂をする。その母親と4人の教師をめぐって様々な欲望が交錯し、やがて一人の女性教師の病理が浮かび上がる、といった内容。

昨年の『ユリイカ』小劇場特集に掲載された若手劇作家四人衆の座談会(江本純子[毛皮族]、土屋亮一[シベリア少女鉄道]、三浦大輔[ポツドール]、本谷有希子)で、「わたしはものすごい王道なストレートプレイしかやってないよ。それしかできないもん」と発言していた本谷さん(ちなみにこの座談会は本当に面白い。抱腹絶倒必至。これを読むためだけにでも購入すべし)。たしかに他の三人が様々な手法で「物語」そのものへの批判的距離を保っているのに比べると、本谷有希子の王道っぷりはきわだっている。しかも、今回は連日テレビでいじめ関連のニュースが報道されるなかでの公演という絶妙のタイミング。

なにげない会話を通して、登場人物一人一人の悪意をえぐりだす本谷有希子の手法にさらに磨きがかかる。トラウマを抱えつつ、それを決して手放そうとしない女性教師の「開放性」が舞台上で感染し、他の登場人物の欲望が少しずつ露になる。結末は少し収まりが良すぎる気がしないでもないが、最後まで投げ出さずにあくまでも丁寧に幕を下ろすのは本谷有希子の優しさ故か。