悪戦苦闘

午後、音楽理論の講座を受けるために菊地さんのお宅にお邪魔する。これまで、どちらかというとバークリー・メソッドにいたるアメリカ商業音楽理論史についていろいろお話を伺ってきて、それこそ「菊地史観」とでもいうべき体系の片鱗を垣間見てきたわけだが(これもやたらと刺激的。いずれ本になるらしい)、思うところあって音楽理論そのものの講座を受けることにした。

中学三年でバンド活動を初めて以来、何度か理論の習得に励んだことはあるけれど、ことごとく挫折した。そもそもベースという楽器があまり高度な理論を必要としないので、極端に言えばルートと5度を弾いて、メジャーかマイナーの区別さえしていれば、あとは手癖でなんとかなってしまう(とくにポップス/ロックやR&Bは。もちろん、アマチュア・レベルの話ですよ)ことをいいことに、結果的にさぼってきたのが実情なんだけど。

で、今回もスケールがどうとか、最初からやる気を失くしてしまうのではないかとかなり不安だったのだが、菊地さんの理論の導入の仕方がすごく面白かった。おそらく、日本で入手できるふつうの音楽理論書で、こうしたアプローチで始まるのは珍しいのではないか。少なくとも僕は見たことがない。「最近のアメリカのニュースクールの連中は、だいたいこうやってジャズ理論覚えてるんだけどね」と菊地さん自身は言っていたが、とにかくものすごく合理的で数学的。それでいて、たしかにジャズっぽく聞こえる(笑)。要するにドレミのスケールから入らない、というのが特徴なんだろうけど、いろんな意味で目から鱗が落ちました。これなら少しは続くかも。