キリンジ『For Beautiful Human Life』(東芝EMI、2003)CD、デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン『Structure et Force』(P-Vine、2003)CD

このところ、この二枚の新譜ばかり聴いている。どっちもカッコいい。キリンジの楽曲の奇形度はさらに増し、DCPRGはリズムの複雑化に余念がない。「コード進行やリズムに関しては、既にあらゆることが試されてしまった」とはよく言われることだが(たとえばそれは、文学の世界で「すべてのことは既に書かれてしまった」という宣言が定期的に現れるのと一緒だ)、彼らはそうは考えていないようだ。この二組のグループは、チャートを確実に意識しつつ、「コード進行」と「リズム」という最も古典的な音楽概念を用いてささやかな実験を繰り返している。「前衛」がいとも簡単に「五線譜を超えて」しまうなかで、こうした地道な啓蒙作業はむしろ保守的といえるのかも。