レディ・イン・ザ・ウォーター
講義後、学生数人と『レディ・イン・ザ・ウォーター』@渋谷TOEI。実は先週も同じ場所で観ているので、今回は二度目の鑑賞。
大傑作である。
一般的な評判は芳しくないようで、映画館は二回とも閑古鳥が鳴いていた。おそらく早々に上映も打ち切られるだろう。だが断言してもいいが、これはM・ナイト・シャマランが映画作家としての実存をかけて放った渾身の一作である。オチがないとかサルがしょぼいとか、そうしたことは瑣事にすぎない。
リアリズムとファンタジーの破壊的なバランスの悪さに支えられた、圧倒的にオリジナルな語り口。あらゆる角度から「物語」を吟味する貪欲さと、その「物語」の力に対する信仰にも似た確信。『翼のない天使』や『シックス・センス』以降、シャマランが繰り返し訴えてきたことが、これほど力強く映像化されたのは初めてではないか。
シャマランについては語るべきことがいくらでもある。たとえばその「語り口」にしても、ノヴェルに対してロマンスの優位を説くアメリカ文化の伝統と結びつけることができるし、しばしば指摘されるヒッチコック・フォロワーとしての側面(カメオ出演、『サイン』と『鳥』の類似など)も、いまだ充分に検証されているとはいいがたい。なにより、シャマラン作品に頻出するファンタジーの要素と時間軸の混乱─これこそがゴシックの本質に他ならないのだが─については、一度きちんと論じられるべきだろう。
『レディ・イン・ザ・ウォーター』は「物語」に関する重要な洞察を含んでいる。それは、物語の真実は必ず「間接的に」伝えられなければならないということだ。チェ夫人が語るナーフのおとぎ話は、ヨンスンを介してしかクリーヴランドに伝わらない(しかも、チェ夫人もそれを又聞きで知ったのだ)。ナーフの指示も、アンナを介してクリーヴランドに伝えられ、ヴィックの物語も書物を介して少年に届けられる。こうして幾重にも迂回を重ねる物語の真実、それはいったい何を表しているのだろうか・・・。とかなんとか言いたいことはたくさんありますが、それより作品の最後でスクラントとレジー(右半身だけ鍛えている男!)が対峙するシーン、その一瞬の神々しさといったら!
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