アレハンドロ・アメナーバル
今年度の講義終了。これからしばらくの間、ただひたすら採点業務です。とくに数百人規模の講義科目は時間がかかるんだよなあと昨日帰りにこぼしたところ、ある同僚は毎年1000人履修する必修科目の採点に一日十時間かけても十日以上かかるそうだ。それに比べれば楽な方です。
昨日は研究室を共有する四人で打ち上げ。研究室棟は新しいのに我々四人は個室をあてがわれず大部屋に押し込められているのです。でもそれぞれの専門領域が異なっていて(イギリス[文学]、フランス[哲学]、スペイン〜ラテンアメリカ[歴史]、アメリカ合衆国[文学])、こういうことがなければ話す機会もないので一年間かえって面白かった。講義の進め方や評価のつけ方などいろいろ情報交換。
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『オープン・ユア・アイズ』では顔を損傷した男、『海を飛ぶ夢』では体が動かなくなった男を中心に物語が展開する。この二つの作品に共通するのは「体(顔)を損傷しても女性を愛する/愛される資格を持つのか」というテーマだ。「中身」がどれだけ魅力的でも「見かけ」が損なわれたとき、人は本当に愛されうるのか、と。そして、アメナーバルは彼らの人生を簡単には肯定しない。むしろ「愛される資格を失った」と自覚する男の妄想を中心に作品は展開する。「妄想」と「現実」が交差する映像形式はアメナーバル作品の大きな特徴だが、それは「見かけ」と「中身」の齟齬という主題と平行している。
思えばデビュー作『テシス─次に私が殺される』(1996)も「映像」と「現実」の対立をテーマに内包していたし、『アザーズ』(2001)も「幽霊」というモチーフをとおして「見かけ」がいかに裏切られるかという問題を扱っている。(個人的には、画面の隅々にまで緊張感が行き届いた『アザーズ』がいまのところ最高傑作だと思う。)もちろん、「見かけ」と「実体」の対立には西洋形而上学の長い歴史が存在するわけだが、外見と中身が食い違う瞬間、そのあまりに残酷な刹那を映像に収めようとする意志こそがアメナーバルの真骨頂だろう。
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