ビーフ!

やっと春学期が終わる・・。

今年から3、4年生向けにゼミのようなものを持つことになり、アメリカ音楽文化関連の論文を読むことにした。でも、これが予想以上に難しい。増田くんがよく書いてることだが、やっぱ二十歳前後の学生にしてみたらどうしても「好き嫌い」が先にきてしまうよなあ。それ自体はまったくかまわないし、発表もおおむね面白いんだけど、なかには「オレ、ロックしか聞かないんでヒップホップどうでもいいっす」という学生もいて(その逆もあり)、「好き嫌い」の水準で語るかぎり、趣味の違いによって生じる教室内の断絶を埋めるのが逆に難しくなる。まあ自分も学生のころは「プログレ?聴きませんが何か?」と頑にふるまうことで自分の音楽的趣味の正当性をむりやり確認していたわけで、彼ら彼女たちの気持ちは痛いほどよくわかる。

これが「シェイクスピア読みます」(そんなことしたことないけど)だと、いとも簡単に「好き嫌い」を越えてお勉強ムードが形成されるわけで、でもそれはそれでよほど工夫しないと彼らのリアリティに切り込んでいくことができない。この両極端―好き嫌いに根ざした個人的な思い入れと、対象とある程度の距離を保つことで獲得できる一般性─をうまく架橋できないものかと迷走しているうちに前期が終わってしまった。

とはいいつつ、このゼミ、ふたをあけてみるとBボーイが二人もいて、毎週彼らのやりとりをみるのが面白い。一人は生まれも育ちもロサンゼルス、毎週コンプトンに通いつめたと豪語する生粋のウェッサイ派。スヌープドッグばりの見た目と格好でシガーをたしなみ、初回のゼミで他の学生の度肝を抜いた筋金入りのギャングスタ(でも話すといい奴)、通称ミッキーD。もう一人は日本のウェッサイ(関西)育ちでほんとはボウズだけど今就活中で髪のばしてます、でも就活もだるいんで日々もてあましてます、と絶妙なフロウを聴かせるノンギャングスタ、通称アキ。同じ西海岸でも俺はアンダーグラウンドの方が好きっすねーとミッキーDに対抗心を燃やしている。

この前たまたま前期最後のゼミということで飲み会を企画したところ、ミッキーDが「あした語学の試験があるんで今日は欠席っす」とギャングスタにあるまじき小市民ぶりを発揮したのでゼミ内に緊張が走った。すかさずアキが「語学の試験とかひよってんじゃねーヨ!」とディスると、「単位落としてんだから仕方がないんだYO!」とミッキーDも負けてない。お、ついに日米ウェッサイをレペゼンする両巨頭によるゼミ内ビーフ勃発か!と固唾をのんで見守っていたものの、いつのまにか二人は和解していたのでちょっとがっかりした。ヒップホップ・リヴズ!(後半は半分フィクションです。)

Hip-Hop Lives

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