アトランティック・レコードとソウル・ミュージック

今月後半から来月にかけてかなり忙しくなることが予想されるので、いまのうちにできることをと思っているうちに、いつのまにかゴールデンウィークも後半にさしかかっていた。5月22日に来日する研究者の12日間にわたるアテンド(広島、京都、東京)とその間に開催される会議の準備を進めなければならないし、別の学会のワークショップでは自分も発表する予定。それに加えて夏期短期留学の事前研修のために毎週土曜日に出勤することになっていて、さらに平行して組合の団交も大詰めを迎えるはず。はたして乗り切れるのだろうか。

読みたい本や観たい映画や聴きたいCDはたまる一方だが、昨年購入していたDVDをやっと観た。アトランティック・レコード60周年を記念して発売されたもので、創設者アーメット・アーティガンを中心にレーベルの盛衰を追ったドキュメンタリー。会社設立60周年の記念に前年に亡くなった創設者をフィーチャーしているわけで、アーティガン万歳色が強いのは予想通り。その辺は差し引いて観ないといけないでしょう。とはいえ、ジェリー・ウェクスラーとの対比(新しもの好きのアーティガンとルーツ志向のウェクスラー)やレーベルにおけるトム・ダウドの存在感など、かなり楽しめる内容だった。若きフィル・スペクターが丁稚としてアトランティックに出入りしてた話や、アーティガンがクラプトンやレッド・ツェッペリンを見いだす逸話なども面白い。あとはなんといってもレイ・チャールズですよ。彼の位置取りをきちんと見極めることで、当時のアメリカ音楽全体の見通しがよくなるような気がする。ところで、トム・ダウドといえばこんな(↓)DVDもあった。これ、二本セットで鑑賞することをお薦めします。マンハッタン計画にも携わった若き物理学者がアトランティック・レコードに職を得て、録音技師として絶大な力を発揮する物語。これはむちゃくちゃ面白い。
トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男 [DVD]

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そして少し前になりますが、こうした黒人音楽の歴史をわかりやすくまとめた本がついに復刊されました。ピーター・バラカン著『魂のゆくえ』。これはほんとうにめでたい。私、この本の初版をそれこそ蛍光ペンで線を引きながらボロボロになるまで繰り返し読みました。黒人音楽に関する基礎体力はこの本で培われたといっても過言ではありません。しかも今回、ディスク・ガイドや本文などさらにバージョンアップされているもよう。若い読者にもぜひ手に取ってほしい一冊です。

魂(ソウル)のゆくえ

魂(ソウル)のゆくえ