2008年ベスト5(?)(再発・発掘音源編)

それほどマメに追っていたわけではないが、新譜編(http://d.hatena.ne.jp/adawho/20081226)につづき、今年再発されたアルバムのなかで印象的なものをいくつか。順不同。(追記:あれ、途中で切れてた。もう一度アップします。)

Gary Usher / Barefoot Adventure: The 4 Star Sessions 1962-66 (Sundazed 2008)

Barefoot Adventure: 4 Star Sessions 1962-66

Barefoot Adventure: 4 Star Sessions 1962-66

「ロックンロール」と「ロック」を厳密に区別するならば、「ロック」はいったいいつ、どこで生まれたといえるのか?これは考えようによってはかなりややこしい問題だ。たとえば、ビートルズがレコード・デビューした1962年はどうだろう。あるいは、1964年のブリティッシュ・インヴェイジョン?だが、ビートルズアメリカを訪れたとき、それは「ポップス」として受容されたのではなかったか。では、ボブ・ディランがエレキに持ちかえた1965年?たしかに、フォーク・リバイバルの反体制的なイデオロギーがロックというジャンルに受け継がれたという意味で、これは象徴的な事件だといえる。だが、それだけをもって「ロックの誕生」だといえるのか。

もちろん、この問いにはロックをいかに定義するか、あるいはポピュラー音楽の歴史をどう捉えるかによって複数の回答があり得るだろう。だが1950年代後半から1960年代前半の同時期にわきおこり、ロック誕生に<直接的な>影響を及ぼした音楽シーンを少なくとも二つ挙げることができる。イギリスのマージーサイドで生まれた「ビート・ミュージック(マージービート)」とアメリカの南カリフォルニアで流行した「サーフ・ミュージック」である。

ゲイリー・アッシャーはそのサーフ・ミュージック界の中心人物の一人である。のちにブライアン・ウィルソンとともに「イン・マイ・ルーム」を作曲し、サジタリアスというグループを立ち上げるだけでなく、ザ・バーズの代表的なアルバムをプロデューサーしたことで知られる彼は、1960年代前半の西海岸音楽シーンで頭角をあらわした。

このアルバムは1962年から66年にかけてアッシャーが「4 Star Music」という音楽出版社と契約していたときのセッションを集めたコンピであり、地元のチャレンジ・レコードから発売されたサーフ・ロック・バンドの曲が数多く収録されている。西海岸の音楽家がロックンロールの洗礼を受け、それをどのように「誤読」した結果、ロック・ミュージック誕生へと結びつけたのか──そのプロセスを見きわめる意味でもとても興味深いアルバム。


V.A. / Take Me to the River: A Southern Soul Story 1961-1977 (Ace 2008) 3CDs

Take Me to the River: A Southern Soul Story 1961-1977

Take Me to the River: A Southern Soul Story 1961-1977

最近めっきり聴かれなくなったサザン・ソウルのコンピ。ブロードウェイ、マッスル・ショールズ、スタックス、ロイヤル、フェイムなど南部の各スタジオでレコーディングされた75曲を収録。オーティス、アレサ、アル・グリーン、アン・ピーブルス、O・V・ライトなどのメジャーどころからキップ・アンダーソン、シャーリー・ウォルトンなどのマイナーなアーティストまで網羅。70ページに及ぶブックレットが付いていて、入門編としても最適だし、ディープなファンも納得の内容。


John Fahey / Visits Washington D.C. (Takoma 1979 Ace 2008)

Visits Washington D.C.

Visits Washington D.C.

1979年にタコマから出たレコード、初CD化。


V.A. / On Vine Street: The Early Songs of Randy Newman (Ace 2008)

On Vine Street - The Early Songs Of Randy Newman

On Vine Street - The Early Songs Of Randy Newman

タイトルどおり、ランディ・ニューマンが作曲家時代に多くのミュージシャンに提供した曲を集めたコンピ。アラン・プライス・セットが歌う「サイモン・スミスと踊る熊」、エリック・バードン&ジ・アニマルズが歌う「ママ・トールド・ミー」など全26曲。


James Brown in the 60s (Shout! Factory 2008) 3DVDs

I Got the Feelin: James Brown in the 60s [DVD] [Import]

I Got the Feelin: James Brown in the 60s [DVD] [Import]

これまで主にブートでしかみることができなかったJB全盛期のライブ映像。80年代以降の伝統芸能と化したJBのステージとはまったく異なる緊迫感。いや、これほんとにすごいです。